永井愛の新作『書く女』は、樋口一葉が主人公。「まさか、自分を一葉になぞらえているのでは」と思われるところもあるが、寺島しのぶの演技が最高だった。
寺島は、大竹しのぶと共に「ダブルしのぶ」だが、今の日本の女優の双璧である。
一葉の伝記で、半井桃水(筒井道隆)と出会い小説を書くところから、「奇跡の1年」で多くの傑作を書き、死ぬまで。
半井への実らぬ恋と生活苦(母は八木昌子、妹は小山萌子)。
さらに、馬場弧蝶、平木禿木、川上媚山ら文学青年の賞賛者との悲喜劇など。
樋口一葉の劇には、北条秀司の新派があり、井上ひさしの『頭痛肩こり・樋口一葉』もある。永井のは、言ってみれば「フェミニズム一葉」であろう。
新しい視点としては、一葉の片思いの相手の桃水は、三流の通俗小説家との従来の評価に対し、朝鮮や中国に対し共同の考えを持っていた、とする積極的な評価である。現在の政治的状況へのアナロジーを持たせているが、有効とは思えなかった。
多様なエピソードを良く踏まえているとも言え、ただの絵解きだとも言える。
皮肉屋斉藤緑雨との対決がクライマックスで、二人は「泣きて後の冷笑」の境地に共感する。
「泣きて後の冷笑」とは、まさにリアリズムで、後の作家で言えば大岡昇平に典型である。
何しろ寺島しのぶがすごくて、面白い。歌舞伎役者のレベルの違いを見せ付けられる。
すべての台詞、振りが決まっており、他の役者はただの素人芸にしか見えない。
高校野球で言えば、PL学園と公立校くらいのレベルの差がある。
唯一つ残念なのは、一葉が多額の借金を申し込んだと言われる、金貸しで祈祷師の久佐賀義孝らとの関係が取り上げられていないことで、やれば見ものの場面になったはずだ。
コメント
書く女
今日は、てら(寺島しのぶ)が出演している“書く女”を観に、世田谷パブリックシアターへ行ってきました。いやー、すごい面白かった!樋口一葉の小説読まなきゃ[:読書:]
舞台が終わってから、楽屋にお邪魔して色々話をしたんだけど、やっぱりてらはテレビとか …
【演劇】二兎社『書く女』2006.10.2
北の国から 92 巣立ち
裕木奈江が可愛くて観てみたが、とうとう…やっぱり…辛かった・・・ 前作も(このシリーズは全部)そうだったが、どうにも救いようが無い。観てるこっちが悲しくなる。もどかしくなる(画面に割り込んで「何テレッとしてんだ!!」と怒鳴りたくなる)観てると元気がドンド…