ミュージカル『ナイン』を見たのは、演出がディヴィッド・ルボーだからである。
彼は、大変才能のあるイギリス人演出家だが、シリアスな劇を得意としてきたので、こうしたミュージカルをどう演出するのか大変興味があった。
『ナイン』は、フェディリコ・フェリーニの映画『8・1/2』(上手く印字できない)をもとに1980年代にアーサー・コピットの脚本、モーリー・イェストンの作詞・作曲、トミー・チューンの演出により上演されているが、ルヴォーもロンドンで演出しているそうだ。
話は、『8 』の他、『甘い生活』や『アマルコルド』なども下敷きにしているようで、著名な映画監督が新作に困りベニスに来て、新作を構想しつつ様々な女性とかかわるというものである。
主演の福井喜一と彼の少年時代の子役以外は、すべて女性である。福井を私は見たことがなかったのだが、歌唱能力は勿論だが、演技に嫌味がないのがとても良かった。ただ、この役は違う。フェリーニのごとき女好き、複雑怪奇でいい加減な人間は、あえて言えば中村勘九郎が最適で、真面目な福井の役ではない。
女優たちの中では、福井の恋人で、オードリー・ヘップバーンのようなスタイルのクラウディアを演じた純名りさが一番だった。この人も芝居では初めてだが、とても上手いのときちんと演じているのに好感を持った。
オーディションで配役したそうで、従来の「役柄や序列」に関係なく配役されていて、元宝塚の安奈淳が映画批評家出身のプロデューサーを演じるなど、少々驚くキャスティングだった。
劇全体は地味だが、私はいいと思ったが、大部分の観客には不満も残っただろう。何故なら、この劇はある種の教訓や感動話を押し付けるものではなく、場面毎のドラマやイメージ的な面白さを味わうものだからである。その意味では映画的、批評的だとも言えるだろう。
大きな劇場ではないのに、楽団が入っていたのは、ミュージカルなので当然だが、やはり生音はいい。テープでは話にならない。
昔、『甘い生活』を見たとき、井原西鶴の『好色一代男』を思い出したが、ああした日本の古典をミュージカルにするという手もあることを、今回思った。
この劇場も、馬鹿みたいなラセン階段があるが、俳優座等とは異なり障害者対策があるのは良い。 (11月13日 アートスフィア)
コメント
ナイン tpt
先々週、TPT企画の「ナイン」を見てきました。
ナインは、フェディリコフェリーニの映画作品、「8と1/2」をもとに作られた舞台。
ストーリーは、主人公の映画監督グイードの栄光と破滅を描いた、
フェディリコ・フェリーニ自身の苦悩のドキュメンタリーのようなもの
ルヴォーがホモだというのは本当ですか
どうでもいいのですが,彼はホモセクシュアルだと聞いたことがありますが,本当でしょうか。
どちらでも良いと思いますが
私には分かりません。