『ヨコハマメリー』

内容が内容なので、敬遠していたが、金沢で特別に上映されたので、見る。意外に傑作だった。
大島渚は、優れたドキュメンタリー映画の条件として「長期取材と対象への愛」を挙げているが、この映画は二条件に合格している。

私が彼女を見たのは、20年位前、当時職場だった山下町の横浜産業貿易センターだった。
白塗りで廊下に立っていて、やはりギョッとした。

戦後、横須賀で街娼だった彼女は、1960年頃横浜に来て、異様な風体で伊勢崎木町、関内、横浜駅に出没し、ハマのメリーさんとして有名になる。
家はなく、ビルの廊下等で寝ていたようだ。
生前の横浜での彼女の映像はほとんどなく、森日出男氏の写真を使用。

彼女に関わった様々な人(「横浜文化人」のオン・パレード)の証言がつながれて行く。
一番多いのは、自身が歌手で男娼だった、故・永登元次郎(ながとがんじろう)へのインタビューである。

最後、老齢のため故郷の特養ホームに入所したメリーさんに、元次郎が慰問公演に行き、上手くもないシャンソンを歌う。
そこで聞く彼女の周囲には、年老いた男女がいる。
映画は、メリーさんにあったであろう人生のドラマを想像させるように出来ている。
だが、同じように平凡に見える周囲の老人たちにも、多分メリーさんと同等のいろいろなドラマがあったはずだろうと私には思えた。

この傑作に一つだけ文句を書く。
彼女が前に立ったこともあったという、伊勢崎木町にあった酒場の根岸屋。
黒澤明の『天国と地獄』の中で使用されたように思えるスチールが挿入されるが、犯人の山崎務が麻薬を受け取るシーンは、勿論東宝スタジオでの撮影である。

根岸屋で実際に撮影された映画は、藤田敏八の『新宿アウトロー、ぶっとばせ』
新宿西口でのファーストシーンの次に、渡哲也と原田芳雄が飲んでいるのが、それである。
金沢産業振興センター・ホール

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コメント

  1. ものぐさ太郎 より:

    意味もなく。
    「根岸家」には、一度、行ったことあり。もう、何十年も前だけれど。数日前の大岡昌平は、もちろん昇平ですね。

  2. さすらい日乗 より:

    直したよ
    有難う。
    尊敬する大岡昇平の名を間違えてはいけませんね。
    直し方が分かったので、訂正しました。