目蒲線の映画

池上線と同じく、蒲田から出る鉄道線に目蒲線があった。今は蒲田から多摩川までの多摩川線で、その先は目黒線になっているが。

この線が出てくるので、一番古いのは恐らく小津安二郎のサイレント映画『生まれてはみたけれど』だろう。子供たちが遊んでいる広場の向こうに目蒲線が走っている。島津安次郎の『隣の八重チャン』にも出てきたと思う。

戦後の小津安二郎の「おなら」映画『お早よう』で、子供たちが住んでいる場所の駅は、目蒲線駅の下丸子あたりだと思う。

戦後では、隠れた名作、堀川弘通監督の『別れて生きる時も』で、薄幸な美女司葉子が、高島忠夫と結ばれ、二人で遊びに行くのは、目蒲線の多摩川園前にあった多摩川園である。今見ると相当に貧弱だが飛行塔などの遊具もあり、見ると非常に懐かしい。

この線の駅武蔵小山駅の都立小山台高校で撮影されたのは、鈴木清順監督の『けんかえれじい』で、高橋英樹が、学校のグランドで軍事教練を受けるが、見ていて

「どこかで見たような学校だな・・・」と思っていたら、私の母校とは驚いた。

異色の作品では、轟夕起子主演の『銀座の女』の脇役として、宍戸錠が出てくるが、これが目蒲線の大岡山駅にある東工大の学生で、不良なのだった。宍戸が、東工大の学生にはとても見えなかったが。

大岡山は、目蒲線と大井町線が交差していて乗降客が多かったので、結構にぎやかな町で、タップ・ダンサー中川三郎が建てた豪華な映画館もあった。

今は、映画館はなくダンス・スタジオになっている。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする