『マーガレット・サッチャー 鉄の女』

メリル・ストリープが演じた劇映画ではなく、イギリスで作られたドキュメンタリー、非常によくできていて面白かった。

サッチャーは、地方の生まれで、メソジスト、父も市長を務めたとのことだが、そう裕福な家庭ではなかったというのが興味深い。

オックスフォード大学を出て、化学会社に勤めたが、政治への野心があり、保守党の政治家として選挙に出て当選する。

1970年代、保守党のヒース内閣は不人気で、彼が党首を辞任した後、彼女は党首になり、首相にもなる。

彼女が党首、首相になるについて、彼女は自分が魅力的であることを利用していたと映画は説明しているが、確かに若い頃の彼女は綺麗である。

映画『Wの悲劇』での三田佳子流に言えば、

「私は女を使ったわ」である。            

後年、「鉄の女」と言われるが、当初は比較的穏健で妥協的であったようだ。

だが、1982年に起きたアルゼンチンとの領土紛争の「フォークランド戦争」で彼女は強攻策を一貫して取り、その成功で選挙にも大勝する。

その後は、いわゆる「サッチャーリズム」で、アメリカのレーガン、ブッシュと歩調を併せて新自由市議的経済政策を取り、俗に「英国病」と言われた経済不振を一掃し、イギリス社会の変革に成功する。

だが、次第に彼女は独裁的になり、他人の意見を聞かず、独断的になっていく。

同じ女性だが、エリザベス女王が、あまりサッチャーを好きではなかったというのが面白い。

それは多分にサッチャーが,保守党ではあるが、上流階級の出ではなかったことがあるようだ。

彼女の演説は、上流階級のものではないことがわかるそうだが、勿論私には分からないが、確かに気取った物言いはない。

1990年に、党内から離反者が出て辞任する。

それは全く予期していなかったようで、まるで日本の三越の岡田茂社長の解任劇のようだ。

さて、彼女がなぜ首相を11年以上も勤めながら、最後は悲劇的に辞めざるを得なかったのか、国内的には「人頭税」導入の失敗である。

だが、国際的に見れば、サッチャー・レーガノミックスの敗北である。

20世紀末は有効に見えたサッチャー・レーガノミックスは、21世紀に入って急速に有効性を失った。

それは、経済のグローバル化によって、企業がその利益を自国には投資せず、世界的な市場に振り向けてしまうからだとされている。

いくら企業減税、法人税減税等をして国内企業を優遇し、利益を出させても、企業はその利益を他国に持って行ってしまい、自国の利益にならないからである。

そのことは、日本の小泉・竹中路線でも同様だった。

サッチャーは、きわめて真面目な人(メソジストだからそうだろうが)、エンターテインメントには無関心だったので、メリル・ストリープ主演の自分の映画化にも興味はなかった。

その頃は、言うまでもなく認知症だったので、見てもわからなかっただろうが。

イマジカBS

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