予告編をやたらにやっていたが、豊川悦司が嫌いなので、見なかったが、意外にも面白かった。
豊川のインチキ臭さも最高だが、なにしろ大竹しのぶの演技がすごい。「芸獣」といわれる大竹の面目躍如であり、野村芳太郎監督の1978年の『事件』以来の名演技だろうと思う。
脚本・監督は鶴橋康夫で、テンポよく劇が進行する。彼は大阪の読売テレビにいたので、大阪の様々な場所でロケされていて、派手な色彩の大阪の町がよく描かれていると思う。
結婚相談所所長の豊川は、大竹と組んで、婚活パーティを開いては、裕福な高齢者を誘惑して処理し遺産を取る「後妻業」を繰り返している。
大竹は、何人とも結婚を繰り返しているが、中心になるのは、元短大教授の津川雅彦が脳梗塞で倒れた時、公正証書で津川の遺産を横取りしようとし、それを阻止しようとする津川の娘尾野真千子との戦いである。
大竹は、金庫の開けて中の預金と株券を横取りすると、津川を病院で殺してしまう。
尾野は、弁護士、さらに元刑事で探偵の永瀬正敏を使い、二人の過去を調査して、津川の前の相手の伊武雅刀の交通事故死も殺人であることを突き止める。
永瀬らが、事件を公表してテレビにも出すぞと脅す時の大竹の台詞がすごい。
「テレビに私はどんな服を着ていけばいいの・・・」
大竹と尾野との戦いが傑作で、下町の汚い焼き肉屋での格闘はものすごく、尾野は、大竹相手によくやっている。
だが、永瀬も悪人で、豊川と大竹を脅し、金を取って依頼人には報告しないようにしてしまう。
最後、津川の遺言状が明らかにされ、尾野と長谷川にも問題があったことも明かされる。
要は、全員が悪人なのであり、一応の善人は尾野真千子と姉の長谷川京子のみだが、父の津川に対して冷たかったことが、大竹との情事の原因であることが明かされる。
津川は、遺言状の中で、大竹とのことについて終始面白かったと言い、彼女のやり口を知ってだまされていたようにも見える。
大竹とだったら、だまされてもよい気もするが、資産のないわれわれには無縁のことに違いない。
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