『ペーパームーン』

東海地方の小都市、熟年夫婦の樫山文枝と西川明は、念願だった喫茶店の準備に忙しいが、金策などが済んで、これからというときに西川が急死してしまう。

ところが西川の弟(二役)で、風来坊の五郎が現れて諸問題を解決してゆく。彼は独身でブラジルに行って働いたりしていた。まじめ一方だった英一とは対照的だったのだそうだ。

樫山の友人の近所の叔母さんたちとの無駄口芝居や、家出していた娘の桜井明美が急に戻ってくるなどもあるが、どこにも「悲劇」はなく、悪人も出てこないので淡々と進行し、場内はかすかな鼾が聞こえつつ一幕が終わる。

「どこにもドラマがなく、帰ろうか」と思ったが、外は異常に暑いので、避暑がてらにいるかと思い、二幕目も見る。

五郎の活躍で店は無事開店され、桜井はデザイン事務所の17歳年上の男と結婚することになる。

そして、開店の日、五郎はなぜか姿を消していて、その理由は、もともと樫山が好きだったからであったことが分かる。

「ああ、これは根底に兄の嫁に惚れる」という不道徳性というドラマがあったのだなと納得するが、本当はもっと前から出しておくべきものと思う。

それに、西川は悪い役者ではないが、遊び人とは見えなく、この役は風間杜夫あたりがやるべき役柄だと思った。

役者にはニンがあり、それは上手い下手ではないからだ。

人々が自分の思いを投函できるという「漂流郵便局」が出てきて、いじめ問題を抱えている女生徒などが出てきたが、あまり関係なかった。作・佐藤五月、演出中島裕一郎。

紀伊国屋サザンシアター

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