１９６４年に松竹で制作された吉田喜重監督作品。脚本も吉田自身、音楽は武満徹と八木正生。
アメリカに憧れ、日本から脱出することを夢見ているバンドボーイが鈴木やすし。
その兄貴分のジャズメンが待田京介、彼の仲間のヤクザが内田良平。
彼らは、待田の情婦で新宿のトルコ風呂の女桑野みゆきの手引きで、トルコ風呂の金を襲う。
きわめていい加減な作戦だが、なぜか成功するが、そこから彼らの逃亡劇となるが、これまた実にとん馬な行動ばかり。
ともかく鈴木らが、まるでバカなのだ。
最後、鈴木は、当時真っ最中だった東京オリンピックの「聖火ランナー」の行進に紛れ、ラジオの中継車に乗り込み、中継アナンサーらを拉致して国外逃亡しようとする。
技術者の機転によって、鈴木がアナウンサーを脅かす言動がラジオから中継され、逮捕取調べを受けている桑野にも聞かされる。
この辺は、少し面白いが、他に見るべきところなし。
勿論、最後鈴木は横浜から出る貨物船の積荷に乗り込み、吊り上げられたところを発見され、捕まる。
なんとも空しい作品だった。
実は、この映画は、封切られた昭和３９年に蓮沼の映画館で見ていて、そのときも最後の聖火ランナーにまぎれて逃亡するところだけが面白かった記憶があるが、今回も全くそうだった。
半裸の下着姿の桑野みゆきの頑張りが空しい。
この映画が興行的にも失敗した後、吉田は松竹をやめ、フリーになる。
彼の作品はかなり見ているが、大抵は観念過剰である。
多分、彼の最高作品は、皮肉にも観念性がメロドラマによって抑制された『秋津温泉』だろう。