『真実一路』

これを見るのは、3回目だが、すごい映画だと思った。
川島雄三イコール『幕末太陽伝』だが、これの方が川島らしいと思う。

冒頭に、昭和7年秋というタイトルが出て、最後は昭和12年で、その間主人公の小学生守川義夫は、1学年しか上がらいので、少々おかしいのだが、気にならない。

父親は会計課長という真面目なだけの堅物の山村聰で、母親は義夫が小さい時に亡くなっていて、姉の桂木洋子が母親代わり。
桂木は、三島耕と見合いし、二人とも気が合うが、断られてしまう。
理由は、死んだと言われている母親・淡島千景が実は生きていて、いかがわしいカフェをやっているからだ。
淡島は、男と付き合って子を孕むが、男は急死してしまい、生まれた子は桂木で、総てを承知して山村は、淡島と桂木を引き取って結婚して義夫が生まれた。桂木は、20くらいで、義夫が小学生というのは年齢が離れすぎている気もするが。
そして、淡島はどうしても堅物の山村が好きになれず、別れたのである。

義夫の友人には、軍人の子がいて、彼は軍人が嫌いだが、科学で名を上げると言う。
それには「地球を傷つけることで、秀吉もナポレオンもそうで、今の日本が中国でやっていることもそうだ」と言い、学校の規則等を破ることを信条としている。
昭和飢饉で、小学校でも寄付が行われ20銭以内とされているが、ケチな山村は、「会社でも寄付しているから小学生は10銭で良い」とし、義夫は傷つく。
ある日、叔父の家に行き、義夫は淡島を見かけ、桂木が「お母さん」と呼んでいるのを目撃する。
淡島は、インテリだが生活力のない発明家須賀不二夫と同棲していて、自堕落な生活をおくっている。

肺炎で山村は急死してしまい、淡島は一度は家に戻ってくるが、義夫は依然として馴染まず「おばさん」と呼ぶ。
当主を失って家は次第に急迫してくるが、淡島は無頓着で、義夫と一緒に温泉に行き、そこで須賀と再会する。
そして、須賀は詐欺で追われる身となり、淡島は義夫へと山村が残した貯金を使ってしまう。
桂木にそれを責められた淡島は、家出して須賀の下宿に行くが、須賀は自殺していて、淡島も後を追う。
その長屋の路地を「大場鎮、陥落!」の号外売りが走っている。

二人の骨壷を抱いて、淡島の弟で絵描きの多々良純は桂木に言う。
「姉さんは、結局自分のやりたいことをやったのだから幸福だったのだ」と。
日本が、満州事変から日中戦争へといくなかで、それに背を向けて自分たちの情痴に流れていった男女を肯定しているのである。
まことに凄いことだと思う。

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コメント

  1. ごろりん より:

    はじめまして。おひさしぶりでもあります。
    ブログはじめました。「ごろりんブログ」といいます。
    以前のHN雫石鉄也は紙媒体の紙媒体のファンジン、同人誌で使用して、今後はネットでは「ごろりん」というHNを使います。以前の「とつぜんブログ」同様、よろしくお願いします。