『やじきた道中・てれすこ』

大晦日、することもないので、伊勢佐木町に行き、中村勘三郎、柄本明、小泉今日子主演の『てれすこ』を見る。
小泉は、ともかく勘三郎、柄本、さらに六平直政、笹野高史、ラサール石井、さらに藤山直美ら芸達者が出ているが、どこにも笑う場所がない。
ガラガラの客席にごく小さな笑いがときどき凍りついた。

所謂「やじきたもの」で、しんこ細工職人の勘三郎と売れない役者の柄本が、女郎の小泉の足抜きを手伝い、小泉の故郷の沼津まで行くと言う、落語ネタから取ったロード・ムービーで、やっている連中は大いに楽しんでいるが、見ている方は全く楽しめないという映画の典型。
ロード・ムービーなので、話はともかく展開され、個々のシーンは役者が上手いので見られないことはないが、どこにもドラマがなく、捻りもない。
こんな程度のシナリオを映画化したのが間違いなのだ。
あるいは、これを舞台でやって役者が熱演すれば受けるかも知れない。
だが、テンポもリズムのないので、どこにも面白さがはじけない。
勘三郎、柄本らは、「この程度のシナリオでも俺たちの演技で笑わせて見せる」と思ったのかもしれないが、安易というしかない。
小泉今日子は、全く魅力なし。元々嫌いな女優だったが、本当に良くないと思う。
最後、藤山直美の茶屋で勘三郎がてれすこを食べ、中毒で生死をさ迷うシーンのみが、この後どうなるの、と少しわくわくさせたが、すぐに生き返って終わり。
そして特に展開もなく、唖然として横浜シネマリンの階段を寂しく上って師走の町を戻った。

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