1961年に東映で作られた戦争映画で、駆逐艦黒雲の連中と、その艦の行方を描くもので、結構面白かった。
そこに新任の機関長として高倉健が赴任してくる。黒雲は不沈艦で、艦長田崎潤以下、水木譲、中山昭二、殿山泰治など個性的な連中ばかり。
南方戦線で活躍し、ラバウルに帰島すると、そこで高倉は、芸者の久保菜穂子に再会する。
艦内の描写も細かく正確のように見えるのは、この頃は経験者がスタッフにも多く、また客も戦争知っていて、いい加減なことができなかったからだろう。
レイテ湾の突入作戦に参加し、大きな被害を受けるが無事呉に戻ってくる。
その時、日吉台では、沖縄への菊水作戦が決まり、黒雲も出撃し、一時は「総員退艦」を新任の神田隆が宣言するが、高倉等が「頑張りましょう」と言って、退艦せずに戦って無事助かる。
だが、最後瀬戸内海に侵入した敵艦隊掃討命令が出て、出艦するところで終わり。
監督は島津昇一で、名前で分かる通り名監督島津安二郎の息子であり、結構良い作品を作っていたようだが。
ここで面白いのは、脚本家で実際に大竹海兵団にいた笠原和夫が言うように、海軍、そして日本の陸軍は「泥棒集団」で、自分たち以外はすべて敵だということだ。
同じ釜の飯を食うという言葉があるが、その内部は民主的で、平等的だが、外部とは常に敵対的で、一切コミュニュケーションがない。
丸山真男的に言えば、縦塾によるそれぞれの天皇への結合になり、中根千枝的に言えば、「タテ社会」そのものである。
ここでも、外部との葛藤は当然のこととして出てきて、アクション・シーンになる。
この黒雲と言うのは、日活の石原裕次郎主演の傑作『零戦黒雲一家』の原作にもなっているらしいが、題名だけのことなのだろうか。
この黒雲という生き残る駆逐艦は、駆逐艦雪風のことだと思うが、レイテ戦突入にも参加し多のだろうか。ここはさすがに細かく描かれていないが、きちんとやると栗田艦隊の問題が出てくるためだろう。
ラピュタの8月は、東映大泉撮影所特集で、結構面白い作品があるので、この夏は阿佐ヶ谷に通うことになるだろう。