今、普通のバスは、運転手のみの「ワンマン運転」で、降りるときは、ボタンを押して知らせるようになっていて、車掌はいない。横浜市では、磯子区に一路線だけあったが、それも今はない。
たぶん、日本中でバスの車掌はいないだろうと思う。
だが、戦前は、バスの車掌は、女性の数少ない職業で、映画もある。清水宏監督の『有難うさん』と成瀬巳喜男の『秀子の車掌さん』。
前者は、伊豆を行くバスの車掌の上原謙が、バス停に止まるたびに「ありがとう」と声を掛ける映画で、ここでは土木現場を流浪する朝鮮人家族が見えるなど社会的な描写もある。
成瀬巳喜男の『秀子の車掌さん』は、地方のバス会社の話で、経済が統制される中で、大会社に吸収されていく。戦後の成瀬の『稲妻』でも、高峰秀子は、バスの車掌を演じている。
おそらく、最後の車掌映画は、1964年の日活の『仲間たち』だろうと思う。
これは、横浜、川崎の臨港バスの運転手、車掌等を主人公とする作品で、舟木一夫、松原智恵子、芦川いづみなどが出ている。
日活が、青春スターの清純路線だった時代の1本である。