ポピュラー音楽30年説

音楽評論家で、雑誌『ミュージック・マガジン』の創設者の中村とうようさんの説に、「ポピュラー音楽は大体30年が寿命」がある。
確かに、ポピュラー音楽は生まれてから大体30年くらいで最盛期を迎え、その後徐々に低下し衰退していく。
シャンソン、タンゴもすべて19世紀末頃にパリとブエノスアイレスで生まれ、1930年代から40年代に最盛期が来て、1950年代頃から次第に衰退していった。
ジャズも、19世紀の終わりにニューオリンズで生まれ、シカゴ、カンサス・シティ、さらにニューヨークと上昇し、形態を変えつつ1950年代に最盛期を迎えた。

ポピュラー音楽は、都市において(多くは港町)ある時期に、様々な人種、異なる階層や民族等が出合って新しい社会的階層やグループができ、その結果、新しい文化が生まれ、その一つとして音楽が生まれる。
その後、新しいグループも30年くらい経つと死滅したり、階層が上昇するなど、大きく変化してし生命力を失う。
だから、ポピュラー音楽は大体30年くらいで寿命が尽きてしまうと言うのだ。
例えば、日本の「演歌」も実は出来たのは1960年代だった。そして、1990年代にはほとんど終わってしまった。
昔から、演歌はあったように誤解されているが、所謂「ど演歌」と呼ばれるような演歌が出来たのは、実は1960年代中頃からであり、それ以前の歌謡曲、流行歌とはかなり内容の違うものである。
つまり、演歌でも寿命は約30年だった。

だが逆に、その音楽が十分に発展しないままに世界的に大衆化してしまう例もある。
その例は、ハワイアンやレゲエである。
この二つは出来たばかりでアメリカのレコード会社の商業主義に上手く合って世界中に広まったために、むしろ現地では十分に発展せずに終わってしまった。
ジャズは、デキシー、シカゴ、カンサス・シティ、そしてビ・バップ、モダン・ジャズと変化発展してきたので、息長く生き延びたと言える。
だが、1970年代以降はほとんど発展していないと私は思う。
「第二クラシック」化し、音楽学校で正科として教えられ、健全音楽になってしまったのが、その証拠である。
学校で教えられるような大衆文化に面白いものはないのは、当然だろう。

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