日系二世の写真家東洋武宮の伝記ドキュメンタリーであるが、最近見た映画では最も感動した。
脚本・監督は日活ロマンポルノの監督だったすずきじゅんいち(鈴木潤一)。
東洋は、戦前からロスで写真家として活躍し、特に日系ダンサー伊藤道夫(千田是也、伊藤喜朔の兄弟)等のポートレートで有名になる。
だが、1941年12月8日の太平洋戦争の開始で、財産は没収、マンザナの収容所に入れられる。
この日系人の収容所入りは、日系人のみで、同じ敵国のドイツ、イタリア系には適用されなく、明らかに人種差別だった。
収容所への強制隔離については、新藤兼人の『地平線』でも描かれていた。
だが、この鈴木作品が優れているのは、収容所隔離問題をきわめて公平に描いていることだ。
その最たるものが、アメリカの社会で必ずしも裕福ではなかった家庭にとっては、収容所は「三食が付きの家」なのだから、「一種の天国」だったことをきちんと描いている。
また、収容所長を始、東洋の友人だったアメリカ人写真家等が、東洋を助け、写真を撮る手助けをしていたこと。
そして、一番重要なことは、この収容所はドイツのユダヤ人収容所のような刑務所ではなく、一種の町であり、そこには学校もあり、野球やフットボールなども行われていた。
総じて言えば、アメリカ社会が多人種、多民族国家であり、様々な意見を許容する社会であることが、こういう隔離問題でも多様な対応が出てくる基盤となったのだろう。
そこから、後半は、日系青年の志願従軍、二世部隊の欧州戦線での活躍になる。
ハワイの元上院議員・ダニエル・イノウエも出てきて、いかに戦争が過酷で、人を殺すことが残酷さを述懐する。彼はかなり右翼で、過激な人だったと思うので、意外だった。
最後は、現在の本土で、ハワイでの二世部隊のパーティーの様子、一方日系人若者の「マンザナ巡礼」の模様がが写される。この対照性がアメリカ社会である。
最後の女性のナレーションが、よく似ているが、随分落ち着いた、タレントらしい派手さがなくなった声だな、と思ったら、やはり榊原ルミだった。
彼女は、すずきと再婚しているのだそうだ。
横浜黄金町のシネマ・ベティ。