今日は休みだったので、野毛の中央図書館に行き、昭和29年、野村芳太郎監督、美空ひばり主演の『伊豆の踊り子』を見た。
これで、『伊豆の踊り子』は、6本を全部見たことになる。
野村芳太郎は、とても丁寧に、また大変抒情的、詩的に撮っている。
ひばりの出る際物映画にはしたくなかったのだろう、大変、文学的雰囲気が強い。
第一、この映画の主題は、石浜朗の水原の一高生の孤独感であり、むしろ石浜が主役である。ひばりは、あまり活躍せず、踊り子のかおるを静かに演じている。
この主人公は、親兄弟がまったくいない孤児という大変異常な人物である。原作者川端康成がそうだったのだが。
母親が上手いなと思ったら、文学座の南美江。この人も今は、かなり体が悪いらしいが。民芸の芦田伸介もいた。
由美あずさと雪代敬子が踊り子、片山明彦が男衆である。
鰐淵晴子版では、母親の桜むつ子が、ここでは旅館の女中役で出ている。
その他、日守新一など松竹大船の役者も多数。
個人的には、『伊豆の踊り子』は、黒沢年男は、とうてい一高生には見えないが、恩地日出夫監督の内藤洋子版が一番良かったと思う。武満徹の音楽が最高だった。
ベストの配役は、やはり山口百恵と三浦友和だったのだろう。
西河克己先生は、この天の配剤の妙に感謝すべきか。