温泉地帯

朝日新聞朝刊に、「大田区が温泉地帯」との記事があったが、私が生まれ育った池上にも久松湯という温泉があった。
黒いお湯で、いかにも体によさそうな泉質だったが、今も営業している。
大田区あたりの地下には、古多摩川の堆積物による温泉があるのだそうだ。

この久松湯は、なかなかの企業家で、開業直後の昭和20年代末にテレビ放送が始まると、2階の広間に置いて見せるようにした。
また、舞台もあり、歌や踊りもできるようにしていた。昭和40年代に全国の自治体が作った老人福祉センターの先取りである。

勿論、テレビの目玉は、プロレス中継で、私も力道山・遠藤幸吉とシャープ兄弟の試合を見た記憶がある。
やはり、横浜市磯子区屏風ヶ浦の、今はなき最高に美味しかった飲み屋「夕凪」は、その昔は銭湯で、ここでもやはりテレビ中継を有料で見せていたと言っていた。
風呂屋や喫茶店では、テレビを見せることを店の目玉にしていた時代があったのだ。

今、テレビは格闘技はともかく、初期のテレビの売り物だったプロ野球中継を地上波ではせず、愚にもつかない、三流芸人による番組を放送している。
江戸時代から明治時代まで、東京や大阪の都会には、各町内に1軒くらい小さな寄席があり、安価な料金を売り物に様々な芸人が出ていたそうだ。
それは、映画が出て来て(サイレントの活動写真だが)、格ありで入場料も高く立派な寄席以外は消滅し、あるいは映画館に転向した。
さらに、戦後はテレビの出現で、映画館もなくなった。

現在、また三流芸人の芸をただでテレビで見せられているのは、江戸時代に戻ったと言うことかもしれない。

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