添田亜禅坊は

今回の「横浜で交差した音 日本篇」の『レコードで聴く関東大震災』で、一番掛けたかったのが、実は添田亜禅坊作の『金金節(かねかねぶし)』だった。
これは、大正時代の成金的風潮を鋭く批判したもので、大変面白く、私は小沢昭一の唄で知った。
5分以上もある長い曲だが、是非掛けたいと思っていた。

ところが、選曲を相談し岡田則夫先生にお聞きすると、「添田亜禅坊の『金金節』のSPはない」とのことで、大変驚く。
実は、添田亜禅坊のレコードは極めて少なく、岡田さんも持っておられるのはたった1枚で、それも音楽ではなく、タンカ売、つまり夜店の物売りの口上なのだそうだ。

添田亜禅坊は、演歌、書生節を大量に作った、言わば演歌師の元締的存在だったが、レコードには吹き込んでいないとは意外だった。
さらに、彼の息子の添田知道のSPも少なく、「それは彼はあまり歌が上手くなかったからではないか」とのこと。
言ってみれば、添田亜禅坊と添田知道親子は、ライターであり、シンガーではなかったということなのだろうか。

世の中には、意外なことが多々あるものだと改めて思った次第。

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