『荒川の佐吉』

高田浩吉が、こんな作品に出ているなんて知らなかった。
『荒川の佐吉』は、言うまでもなく、真山青果の戯曲で、市川佐団冶、市村右衛門、現在では中村勘三郎、片岡仁左衛門らが演じている名作である。

話は、二つあり、大工だった佐吉は、ヤクザの三下になっているが、その組の親分の沢村国太郎が、浪人の安部徹に片手を切られ、組を取られ、国太郎は落ちぶれて、最後はいかさま賭博を見破られて殺される。
もう一つは、高田浩吉の姉の息子が、盲人で、裕福な婚家から捨てられ、佐吉がわが子のように育ている、のである。
そこに、沢村の娘の高田への恋が絡む。
この女優は誰かと思うと、宮城野由美子だった。
彼女は、宝塚から映画界に入り、東宝、松竹等で日本的な娘役としてかなり人気だった。
後に、日活に入り、時代劇を制作していた初期に活躍したが、監督蔵原惟繕と結婚して引退した。
日活の初期を支えた女優の一人である。

最後、高田は、安部徹に勝ち、盲目の子供の目も、蘭方医の手で治る。
と息子を返してくれと商家が言ってくる。
この息子との別れが、人情話の眼目で、一応安部徹殺しのほとぼりを冷ますため、佐吉が両国橋から江戸を去るところでエンド・マーク。
真山青果のセリフ術はすごいが、それをきちんとこなしている高田浩吉は、さすがである。
衛星劇場

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする