『千代田城炎上』

1959年、大映京都で作られた、江戸城大奥もので、当時としては大変珍しかった題材だと思う。
江戸時代中期、大奥に材木屋の娘の新珠三千代が勤めに上る。
場所は、お台所であり、そこには意地悪な女ボスの千石規子もいる。
新年の祝いに、新参者は芸を披露する習慣で、できない者は裸踊りだと古参から脅される。
すると新珠三千代は、いなせな若衆姿で踊りを披露して、お局様村田千栄子のもとに引き上げられ、さらに火の用心の担当になる。
ある夜不信な者を捕らえ、そこから不正の証拠を掴み、目付け役の勝新太郎に届け、その功績で出世し、勿論勝新太郎からは言い寄られる。
また、上様の三島雅夫からも、その美貌を目に付けられ、夜伽を命じられるが、断固として拒否し、打ち首されそうになるが、大奥の女すべての助命嘆願で助かる。
そして、江戸城は、ある女の恨みからの火付けで炎上する。
真面目で清く正しい生涯を送った女性の一代記というわけである。

大奥ものというと、1960年代後半以降の東映の岡田茂のマル秘もの、エロ・グロ路線が有名だが、ここでは主演が新珠三千代でもあり、そうしたいやらしい場面は、一切ない。
監督の安田公義も、脚本の依田義賢も大変まじめに作っている。

安田は、稲垣浩の弟子で、元が美術学校の出だったので、画面もしっかりとしていて、森一生に継ぎ、大映ではなんでもそつなく作る娯楽映画監督だった。
そのような思い込みを一掃させたのが、1966年の安田道代主演で、石立鉄夫が犯人役、原田康子原作の『殺人者』だった。
これは、まったく評価されたことのない作品だったが、偶然川崎の追分劇場で3本立てで見て驚嘆したものである。
もう一度見てみたい作品の一つである。
日本映画専門チャンネル

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