『胎児が密漁する時』

若松孝二の代表作として有名だったが、初めて見て確かに傑作である。
冴えない中年男の山谷初男が、女志摩みはるを自室に監禁して暴行を加える。
所謂サディズムだが、山谷が無表情に行うのがすごい。
監禁物としては、増村保造監督の緑魔子、船越英二主演の『盲獣』もあるが、この若松作品の方が先である。
後に、日活ロマンポルノでは、谷ナオミ主演でサドマゾものが多数作られたが、その先駆と言うべきだろう。
脚本は、足立正生で、音楽が宗教音楽やクラシックで、極めて荘厳な厳しい雰囲気を与えており、最後、男は女の刃物で無残に殺される。
モノクロの映像に迫力がある。

併映は、若松の初期の作品『鉛の墓標』で、母親を米兵に殺された主人公が次々と非常に人間を殺していく映画で、セックス映画というより、ハードボイルドな暴力映画。主演はピンク映画に多数出ていた二枚目野上正義。

シネマ・ヴェーラ渋谷

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