『リチャード3世』

3年前の大傑作『ヘンリー6世』につづき、イギリスの王政の争いを題材としたシェークスピアの史劇。翻訳は小田島雄志、演出は鵜山仁である。

出演者も、同じ中島朋子など俳優も出ていて、善玉は涌井健治だが、今回の主役は、すべての悲劇を引き起こすセムシの悪玉のリチャード3世は、岡本健一。

前半は、バラ戦争を勝ち抜いて、グロスター公から王になり、リチャード3世となる岡本が、兄弟をはじめ周囲の者を殺害し、追放し、破滅させるドラマ。

この劇は、全体にかなり省略されているようで、この兄弟殺しのところは、少しわかりにくかった。

2幕目は、フランスに亡命していたリッチチモンド伯が帰国し、イギリスの諸国の軍隊も反乱を起こして、最後の二人の決闘で、リッチモンドがリチャードに勝ち、ヘンリー7世となり、騒乱に終止符が打たれて、ハッピーエンド。

この最後のところも相当に省略してあるようで、少々あっけなく終わった。

だが、シェークスピアは、歌舞伎のようなもので、要は役者を見せる劇なのだから、これはこれで良いと思う。

新国立劇場のプリンス涌井健治の素晴らしさが今回も目立った。

昔、国立劇場ができて、そこでの公演で、歌舞伎座では一部の者には注目されていたが、特に有名ではなかった坂東玉三郎が大スターになったように、涌井健治がスターになることで、新国立劇場の最大の功績となることをお祈りしたい。涌井を見るための、この劇場のミーハーへのファンが生まれるようになればまことに幸いである。

帰り、バスで渋谷に出て、公園通りの教会の前を通過した。

この地下には、言うまでもなく渋谷ジャンジャンがあり、ここでシェークスピア・シアターの『リチャード3世』を見たことを思い出した。彼らは地味だったが、結構良い芝居をやっていたが、今ではその名を知っている者も少ないだろう。

新国立劇場

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