テレビで丹波哲郎の映画『コレラの城』を見ていて、私たちもコレラにかかったことを思い出した。
ちようど30年前に結婚し、新婚旅行にインドネシアとシンガポールに行った。
言うまでもなくシンガポールは、ブランド品を買いたい女房の希望で、インドネシアのバリ島に行ったのは、音楽カセットを買うためである。
当時、アジア等の音楽カセット等はまったく輸入されていず、旅行で現地に行った人の間で交換し、テープを録音しあっていた。
そこで買ったガプーラのカセットは、もちろん中村とうようさんと交換し、よく聞いたものである。
そのインドネシアの面白さに女房も気に入り、翌年もジャカルタに行った。
旅行雑誌で予約したツアーで、成田集合で成田に行くと、担当者が
「今回はお二人だけです。ジャカルタのハリム空港に着くと出迎えが来ていますので、それでホテルに行って下さい。後は自由です。
出発日には、また現地ガイドがホテルに出向えに来て空港まで送ります」
そういうツアーだったが、翌日ガイドに頼み、半日ジャカルタ市内をガイドに案内してもらい、その後は自由に適当に市内を遊んだ。
最後の日、すべてが無事に終わったので、ホテルの日本料理店で日本食をとった。
刺身定食を食べたが、部屋に戻ると1時間後から猛烈な下痢に襲われた。
特に私のほうがひどかったが、翌日はこらえて空港の検査等にも一切申告せず、なんとか日本に戻ってきた。
そして日本への帰国2日目には私は職場に出た。
だが、次の日から再び猛烈な下痢に襲われ、仕方がないので、近所の医者に行った。
医者は即座に言った。
「コレラに間違いない。
ただし、コレラにも保菌性コレラと非保菌性コレラがあり、日本人が罹るのは非保菌性コレラである。
それは食中毒のようなもので、悪質ではない。ただし、俺も医者だから本来は検便をしなくてはいけない。
今、検査すれば必ずコレラ菌が出て、大騒ぎになる。横浜の職場まで検査、殺菌になるだろうが、そうしたいかい?」
「いいえ」
「取りあえず抗生剤をあげるからそれを飲んで下痢が収まったら検便をしよう、その時はもうコレラ菌は出ないだろうから」
名医の言うとおりにしてコレラ菌騒動は無事終わった。
くれぐれも東南アジアに行ったら、ナマモノは食べないこと。
コレラの下痢の苦しみは到底文字にはできない、便が全く出ないのに非常な便意に次々と襲われるのである。