レコード大賞の発表番組を見るなんて、何年ぶりだろうか。
水原弘が、『黒い花びら』で1回目の大賞になったときの中継を見た記憶があり、会場は神田共立講堂だと思っていたが、本当は文京公会堂だったらしい。
さて、大晦日のレコード大賞と紅白歌合戦は、民放のNHKと言われたTBSとご本家NHKの看板番組で、共にテレビ界の大々的な年中行事だった。
どちらも人気歌手が出るので、いつも話題なっていたのである。
どちらも言って見れば、「壮大な村祭り」であり、年末に見るにはふさわしいからである。
会場は、レコード大賞は帝国劇場の時代が長かったが、それは紅白歌合戦が、東京宝塚劇場で行われていたからで、なぜ宝塚劇場で紅白歌合戦が行われていたかは、当時内幸町にあったNHKに近かったからだろうと思う。
レコード大賞が午後9時に終わり、9時から紅白が始まり、両軍入場なる儀式が始まると、なんと多くのレコード大賞に顔を出していた連中もいるのには驚いたものだ。
帝劇と宝塚ならすぐ近くだったので、それも可能だったのだろう。
それに異変が起きたのは、NHKの渋谷への移転だった。
有楽町から渋谷への移動では、いくら大晦日で道が空いていたとしても時間はかかるからである。
だが、いつの間にかレコード大賞は、その日にちが12月31日の大晦日ではなく、12月30日になっていたようで、会場も新国立劇場になっていた。
それぞれの劇場も正月公演を控えているので、正月すぐの公演が普通はない新国立劇場は好都合なのだろう。
新国立劇場の中ホールは、さすがに音も良いので、レコード大賞の発表会場としても悪くないに違いない。
さて、最優秀新人賞が、演歌の福田こうへいではなく新里宏太と言うのはレコード大賞らしい。
TBSのレコード大賞は「演歌は紅白に任せておけ」なのか、比較的新しもの好き、洋楽志向だからである。
さらに、今年の最優秀大賞はEXILEで、大賞にはAKB48もいた。
AKB48は、キンキン声が苦手だが、これはチアリーダーなのだなと初めて気づいた。
そういえばEXILEも応援団風である。
近年、人を励ますとか元気づける曲ということがよく言われ、その意味でこうした「応援ソング」が流行るのだろう。
だが、応援ソングが、本当に日本人を元気づけるのか、私は非常に疑問に思っている。
かつて日本映画のドル箱作品には、三益愛子主演の「母もの」があった。
生みの母、義理の母、育ての母等の複雑な家庭環境の下、母と子が不幸の中で生きていくというものだった。
私は、当時映画館でこうした作品を見たことはないが、場内は涙、また涙だったそうだ。
そうして多くの不幸な日本人は泣くことによってカタルシスを得て元気になったのである。
それが日本的、アジア的心情というものであり、多くの伝統芸能は、こうした泣きのカタルシスを観客に与えて成立していた。
それが今やストレートな応援ソングに代わったとは、日本人のメンタリティも西欧化したことの現れなのだろうか。