九州の筑豊で、炭鉱の絵を描き続けた山本作兵衛のことを描いた記録映画である。
飯塚で、川船の船頭の子として産まれた作兵衛は、鉄道の発達で船による石炭の運搬が廃れ、父が炭鉱夫になったことから、尋常小学校の途中で自分も働くことになる。
筑豊で36の中小炭鉱で働き、66歳で抗夫をやめ、炭鉱の夜警になってから、筑豊の炭鉱で働く人びとの姿を彩色画で書くようになり、その数は1,000以上を書いた。
だが、乞われて描き、その相手に上げてしまったものも多く、全体は不明のようだ。
私が、彼の作品を知ったのは、記録作家上野英信の『地の底の笑い話』等の岩波新書での挿絵であった。
不思議な作風だと思ったが、芸術的レベルの云々というよりも、日本の庶民の近代の姿を記録した貴重な記録だと思う。
それが評価されて、2011年5月にはユネスコの記憶遺産に登録された。
今回、カラー映像で見て、その絵に日本の庶民の生の姿が描かれていることに感動した。
多くの抗夫は刺青をし、相方の妻は、上半身裸で石炭を運搬している。
もちろん、大正時代の米騒動で炭鉱でも衝突があったことが書かれている。
ちなみに、作兵衛さんは、大の酒好きだったそうだが、喧嘩、博打、女とは無縁で、それを誇りにしていたが、それがつい最近までの日本の大多数の人間の実態である。
横浜ニューテアトル