きれいごとを演じることのすごさ 原節子

NHKのクローズアップ現代で原節子の幻のフィルムが発見され、修復しているとあり、原節子の美しさを取り上げていた。

フィルムは、日活の『検事とその妹』で、ボロボロのフィルムから再生されたのは、まだ10秒くらいで、おそらく来年以降の公開になるのだろう。

神戸映画資料館に持ち込まれたもののようで、横浜の横シネで作業が行われているようだ。

さて、ロスの杉葉子、さらに原節子と共演した数少ない女優の香川京子らが述べていたが、そこで語られるのは、原節子の日常生活の佇まいの美しさだった。

それは、私の想像では、彼女は、映画ファンが彼女に対して持つイメージの、きれいごとを演じるすごさとでもいうべきものだろうと思う。

同時にそれは、戦後、黒澤明の『わが青春に悔いなし』や吉村公三郎の『安城家の舞踏会』、さらに今井正の『青い山脈』で表現された民主主義社会で生きてゆく女性の美しさ、自由さといったものを、自分に合ったものとして受け止め、その線上に行こうと決意したのだと思う。

                  

戦時中、彼女は、多くの戦意高揚映画に出たが、そこでは彼女の演技が西欧的で時代にそぐわないと度々批判されていたことの裏返しである。

西欧的と言われ、非難されてきた彼女が、戦後映画に生きる場を見出し、まさに頂点に達していた1963年に引退したのは、やはり象徴的だと言えるだろう。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする