『座頭市・地獄旅』

館山から三崎への渡し船の渡り板から足を踏み外しそうになった座頭市は、浪人の成田三樹夫に救われる。

                     

船が出ると、そこに勝新を狙うやくざの戸浦六宏、さらに小姓姿の女林千鶴などがやってくる。

船内ではサイコロ賭博が行われ、勝新は、盆の外にサイコロを出して騙す方法で、素人から金を巻き上げたりする。だが、これはもう一度陸に上がってやり失敗する件もあるなど、脚本が非常に面白い。巨匠伊藤大輔なのだから、当然だが。

市は、幼児を連れた女岩崎加根子と知り合い、幼児が破傷風になったことから一緒に箱根の宿に泊まることになり、そこには林の兄で、親の仇を狙う山本学と従者丸井太郎もいる。

そして、林千鶴もやってきて、林は山本の妹で、道中は危険なので男の姿だったのだ。林は今は円の高林由紀子で、男姿も凛々しい美人である。

それでみなが揃うが、これは「グランドホテル」だなと思う。

最初に、毘沙門天神社で丸井が殺される。彼しか、山本・林兄妹の親の仇の顔を知らないのだと言う。

親が殺された原因は、将棋の戦いの争いで、相手は異常に早指し将棋が上手い浪人とされ、成田も実は早指し将棋であることと結びつく。

この将棋の争いから仇討ちになるというのは、伊藤大輔の『下郎の首』と同じだなと思う。

また、実は岩崎加根子の夫を殺したのは座頭市なのに、互いに交情を交わすというのも、長谷川伸の「沓掛時次郎だな」と気づく。

要は、娯楽映画の様々なテクニックが凝縮されて使われているのである。

市は風呂で、丸井太郎が殺された池から子供が拾って来た釣りの浮きを手に入れ、成田が犯人であり、仇だと気付く。

そして、戸浦らが宿に来たので、勝新を促して岩崎は旅に出ると、成田も付いてきて、二人は歩きながら将棋を指す。

もちろん、口先だけの勝負であり、最後の王手というところで、成田は鼻をかく癖を出し、勝新は「勝った!」と杖を抜き、二人の戦になる。

そこに山本・林も駆けつけて来て、仇を討つ。

最後、戸浦六宏らを片付け、岩崎の思いを知りながら、勝新は箱根の山を去ってゆく。

十国峠だろうか、遠く富士山が見える。

座頭市の中でも、最初の同じ三隅研二の『座頭市物語』、井上昭監督の『二段斬り』と並ぶ傑作だろう。

フィルムセンター

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