1954年の東映作品で、監督は内田吐夢、主演は片岡千恵蔵で、弓の名人の猟師。
冬山で猪を見つけ、弓を放つが、銃声がして武士の一団が駆けつけてきて、銃で仕留めたと言い張るが、どこにも弾痕はなく、千恵蔵のもの。
武士は、新たに代官として天領に赴任してきた月形龍之介で、時代は幕末で、その地は京都に近い場所のようだ。
徳川慶喜が大阪にいて、すぐにも薩長と徳川方で戦端が開かれるとの時期で、月形は「長年のご恩に報いるためには、絶対に薩長に勝たなくてはならない!」と幕府側の勝利に向けて天領の支配を強化し、年貢を急増し、使役も徴発するなど悪政をひく。
高千穂ひづるの姫様が伊藤久哉と隣藩から逃亡するのを千恵蔵が助けたり、月形が反薩長のための砦を造営させるなど、いろいろある。
一番笑ったのは、月形が千恵蔵の息子(実の長男・植木基晴)が代官所に無礼を働いたとき、子の頭に蜜柑を載せて、弓で射てと強要する場面で、明らかにウィリアム・テルだった。
この辺から筋が混乱してきてよく分からなくなり、最後には砦に幽囚されていた千恵蔵をはじめ村人が代官所を襲って成功してしまう。
月形たち悪役は、船に乗って逃走するところでエンドマーク。
この時代にまだあった民衆蜂起への願いなのだと思うが、こう簡単にはいかないだろうと思ってしまう。
思うに、高千穂の「皇女和宮」的な話など、原作ではいろいろあったと思うが、時間の都合で千恵蔵のことだけになり、変な映画になったのだと思う。
川崎市民ミュージアム
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