フィルム・センターの「溝口健二再発見」
入江たか子が、鬼の溝口の指導によって演技開眼したといわれる作品。
たしかに良く出来た面白いメロドラマ。
原作がトルストイの、というより「カチューシャ」の『復活』なのだから。
映画の原作は翻案の名手川口松太郎、脚本依田義賢と溝口。
ここでも、入江が幸福になるようにと、漫才の相方の河津清三郎が金持ちの息子清水将夫のところに戻るようにと、刃物三昧を起す「愛想尽かし」がある。
同じ川口の新派劇『鶴八鶴次郎』でも使われた有名な手法である。
入江は、河津の芝居と分かっていながら、その心使いに、清水の元に戻る。
だが、清水の父親の反対で、また入江は川津と一緒に漫才に立つところで終わるのだが。
ここに示されているのは、「人情の機微をわきまえている」と言う、江戸っ子の心意気である。
下町の江戸っ子の川口や溝口には、貧しくとも自分たちには人間の心を理解しているのだ、という矜持が強くあったのだと思う。
戦前の焼ける前の浅草等の情景や、下層芸人が出てくるのが興味深かった。
豊田四郎の『夫婦善哉』に出てきた風俗と全くそのままだった。
昭和30年代は、戦前を経験していた人だったのだから当然だが。
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出演者は、山路ふみ子です.