日活は、裕次郎時代から非行少年ものが得意で、異色青春路線などと自ら呼んでいた。
監督は藤田敏八で、わざわざタイトルで繁矢改めと出る。彼の本名は、藤田繁也だが、最初の映画『非行少年・日の出の叫び』の時、チーフ助監督の岡田裕が間違えて、繁矢としてしまい、岡田が謝りに行くと、藤田は「それもいいな」と繁矢になったのだそうだ。
実にいい加減というか、名前なんてどうでもいいというあたりは、いかにも藤田らしいというべきか。
話は、金持ちの当主の愛人だった南田洋子の息子で不良少年の石橋正次の家庭教師として、元少年院上がりの自動車修理工の地井武男が雇われ、いろいろと不思議な体験をするもの。
舞台は、鎌倉で、彼は地元の不良ともめ事を起こしたり、ガールフレンドと付き合ったりするが、彼女は高校生運動をしているのは、時代である。
一番おかしい事件は、石橋の腹違いの姉、つまり本妻の娘松原智恵子、その兄江原真二郎が議員の娘梶芽衣子との婚約披露パーティである。
元恋人の伊丹一三が来て、江原に拳銃を突きつける件があり、ハプニングだとされるが、地井は江原が仕組んだ芝居だと推理する。だが、石橋は、伊丹が持ってきた拳銃には弾が込められていて、本当は伊丹は江原を殺すつもりだったが、石橋が、伊丹が着替えている間に弾を抜いたので、撃てなかったという。
要は、地井は、欺瞞性を告発しているわけだ。
最後、さらに地井は言う、自分の牙は手前で磨け、と。
日活を出て、一人で映画界を生きていくことになる藤田の決意だったのかもしれない。
ラピュタ阿佐ヶ谷