『友を送る歌』

大学に入った1966年、日活はほとんど見ていたのだが、これは吉永小百合主演の『風車のある街』というオランダを舞台にしたらしい映画との2本立てで、ばかばかしそうなので見なかった。舟木一夫と山内賢との友情、和泉雅子との恋物語で、監督が西河克巳なのでなかなかうまくできている。

北海道から上京し、共に船員になることを約した二人だが、舟木が横浜に来ると、山内が行方不明。西河曰く「ここにも『第三の男』が入っています・・・」で、彼を探す過程で、横浜港が描かれる。

1960年代なので、コンテナ以前の「在来船」の全盛時代で、新山下の貯木場前には艀が多数入っている。通船の船長二谷英明と知り合い、また船に弁当を運ぶ飲食店の娘和泉雅子とも知り合う。こうした船用品の業者は、マリン・サプライヤーといい、有名な食品店の明治屋も発祥は船用品店のはずだ。マリン・サプライヤーにはピンからキリまであり、中には女性をお世話するような不届きな連中もいたそうである。

和泉の寡の親父が江戸屋猫八、山内賢の上の悪の親玉が土方弘というのが泣かせる。さすがに脇役の配役も上手く、今は別れていて筑波に住んでいるという、和泉の実母が東恵美子というのもいい。東恵美子の実母は、下町小町と言われた美人で、それを浪花節の東武蔵が口説いて結婚してできたのが東恵美子なので、美人なのである。

美人の娘は美人というわけである。

さて、『第三の男』とは言っても、山内賢はまだ完全に悪人になっていないので、最後改心し、舟木は船に乗って横浜を去ってゆく。西河克巳は、舟木は芝居心があると言っているが、確かに上手い。ただ、新しさはなく、全体に松竹大船的である。

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