『花のお江戸の法界坊』

歌舞伎の「法界坊(隅田川続俤)」の映画化である。戦前に東宝で、エノケン(榎本健一)の主演で斉藤寅次郎監督が撮っていて、名作とされている。

久松静児が東京映画で1965年に作ったここでは、法界坊はフランキー堺。
その他、山茶花究、三木のり平、有島一郎、伴淳三郎、それに平幹二朗、女優は岡田まり子(字が出ない)、淡路恵子、それに松竹の清純派だった榊ひろみは、珍しい。
脚本が大ベテランの小国英雄、話は歌舞伎と同じで、願人坊主の法界坊が引き起こす非喜劇。歌舞伎のヒーローのくせに金と女に弱いと言うのが極めて人間的、現代的である。建前ではなく本音なのが珍しい。

ご大家の令嬢の榊を誘拐する話は、「髪結新三」と同じで、この辺は歌舞伎でも昔はかなり猥褻に演じられたらしい。
法界坊の先輩を敬いエノケンも最初と最後に出る。
どうということもない単純娯楽映画だが、こういう風に単純に見せるのも大した力量だと思う。
役者では、やはり三木のり平が圧倒的に面白い。

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