大森の映画館

JR大森駅近くにも多くの映画館があった。大森は、山王に象徴される世にお屋敷町があり、中には民間の高級テニスクラブもあり、私の小学・中学の同級生だった田辺史彦君は、身分不相応にも高校生でそこに入っていた。勿論、溺愛していた母親の金によるものだろう。彼は非常にかわいいルックスだったので、女性にもてて、多数の女性と浮名を流していたが、40代で死んでしまった。たぶん、最初の女性だったはずの方は言った

「好きなことをいくらでもやったので幸福だったんじゃないの」 女性は実に冷静なものだなと唖然とした。

逆に、大森の海岸側には、昔から料亭があり、小津安二郎の映画『早春』で、岸恵子と池部良が不倫の一夜を過ごすのは、大森海岸の旅館である。今でも大井競馬やボートレース場もあり、大森駅の西側は、お屋敷町とは正反対の庶民的な町になっている。

たぶん、この辺にあった映画館で最初に見た作品は、ルネ・クレマン監督の『禁じられた遊び』で、超満員だった。普通なら行く蒲田ではなく大森だったのは、この映画は蒲田ではやっていなかったからだろうと思う。ルネ・クレマンは、名匠のように思われているが、実は職人的な監督と言うべき人で、日本で言えば舛田利雄のような監督であると思う。彼の作品では『狼は天使の匂い』が好きである。ややホモセクシュアル的な匂いが漂うのが気になるが。

西口にあった洋画系のエイトン劇場は、結構良い作品をやっていて、『ラムの大通り』などを見た。その大分前に松竹映画『活弁物語』を見た記憶があるが、なんで行ったのか憶えていない。ここは今でもビルはあるが、雑居ビルになっていて二階には、ライブハウスが入っている。

大森駅の東口は、すぐに崖になっていて狭いので、池上方向に下った山王3丁目に映画館があった。元は東映系だったと思うが、1970年代はロマンポルノ上映館になっていて、藤田敏八の『実録・不良少女・姦』を見た。これで少女の売春の相手をするのは江角英明で、横浜市水道局職員になっていて、市役所の市会側の玄関が出てくるのには驚いた。

今でも、大森にある映画館は、西口の元は西友だったビル内のキネカ大森で、なかなか独自の番組を組んでいたが、今は東京テアトルが運営している。シネ・セゾン時代は、元日本共産党員の堤清二氏の関係だろう、いわゆる共産圏の映画も上映されていた。キューバの野球映画『フル・カウント』、北朝鮮の特撮映画の『プルガサリ』などは、ここで見たがどちらも面白いものだった。

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