『燃える秋』

私は正直に言えば、小林正樹という監督がそれほど良いとは思っていないのだが、これなど身過ぎ世過ぎの金儲け映画だとしても、本当にひどいし、品性が下劣なように思える。
日活ロマンポルノならともかく、東宝公開で、金持ち老人に性的に養育された若い女性が、その性的誘惑と若い男の直線的な愛の間で揺れ動くなど、バカらしいにも程がある。
真面目だけが取り柄の松竹出身の監督には到底に無理な題材で、舛田利雄や井上梅次あたりが撮れば良かったと思う。
以前から、私はこの主役の真野響子という女優が嫌いだったが、この映画を見て、心底馬鹿で、ひどいと思った。
親ほどに年の違う画廊主の佐分利信に誘惑されて愛人になっていた真野は、佐分利の手から逃れて行った祇園祭の京都で、商社マンの北大路欣也に会い、互いに恋に落ちる。
北大路欣也は、ペルシャ絨毯に魅せられていて、商売もしているが、彼の影響で、真野もイランに行き、そこまで追いかけて来た北大路と一度は婚約する。
だが、彼がイランで撮影した絨毯の写真を基にして日本で安価な絨毯を大量生産しようと聞き、彼と別れてイランに残る。
なんて馬鹿で嫌味な女なのだろう。
しかも唯一の見所の真野響子のヌードは吹き替えというのだから、いったいどこに感動できるのだろうか。
岡崎宏三のカメラ、武満徹の音楽と真野の親友小川真由美の喜劇的演技のみが面白い。
企画が岡田茂で、東映の元社長ではなく、三越の社長だったが、「なぜだ?」の名言で社長を解任され、この夏に亡くなられた岡田茂である。
チケット買取映画の嚆矢だが、1979年なので、もう35年以上前の作品なのだ。
シネマヴェーラ渋谷

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