『憎いあンちくしょう』

映画館でも何回か見ているが、久しぶりにビデオで見直したが、面白さに引き込まれた。
石原裕次郎と浅丘ルリ子が、「熊本の無医村にジープを届けてくれ」との芦川いづみの願いに答えて東京から熊本まで、全国縦断するロード・ムービー。
芦川の恋人の医師は、小池朝雄。

裕次郎は、テレビのキャスターで、『今日の三行広告』からという番組をやっている人気者。その日は、黛敏郎と菅原通斎が特別出演で出ている。
浅丘ルリ子は、マネージャー兼恋人。
ともかく、山田信夫のシナリオ、蔵原惟善の演出が最高、黛敏郎の音楽もすごい。
ルリ子が、忙しい一日が終わり、自分の部屋で服を脱いで鏡を見て自らに向かって「てんでイカシちゃっている!」というところなど、いつ見ても最高。
よく「めくるめく感動」と言うが、まさにこの映画など、めくるめく感動の映画である。
この裕次郎が演じた北大作と言うのは、実は永六輔がモデルで、彼がやっている「今日の三行広告」からは、当時ラジオ関東でやっていた番組『昨日の続き』のことなのである。
『昨日の続き」は、今のトーク番組のはしりのような番組で、永六輔、青島幸男、前田武彦らが、唯一の女優富田恵子とトークを繰り広げるもので、当時実に新鮮な番組だった。ラジオ関東という、マイナーなラジオ局の番組だったので、知っている人は少ないようだが。

映画の終わり近く、福岡に来ると、丁度博多祇園祭りで、山笠の祭りの行列の渦に二人は巻き込まれるが、そこで愛を確かめ合う。
今でこそ有名だが、この博多山笠が映画で出てきたのは、多分この作品が初めてだろうと思う。

大阪でジープに強引に乗り込んでくる記者は佐野浅夫、静岡のドライブインの親父が山田禅二など、各所にしぶい役者が光る。
当時の日活の総力を結集したよなうなすごい作品であり、日本映画史上に残る名作の一つだろうと思う。
スターの娯楽作品で、これだけの観念的なメッセージを展開したのは他にまずないだろうと思う。

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コメント

  1. nonoyamasadao より:

    ご無沙汰いたしております
    おはようございます。
    少し昔にずいぶん教えていただきました。毎朝、愛読しています。
    やっぱり、蔵原となると。。。黙っていられない、ということでやってまいりました。
    >よく「めくるめく感動」と言うが、まさにこの映画
    >など、めくるめく感動の映画である。

    僕のような蔵原ファンからすれば、よくぞ書いて頂いた。いいえて妙だと思っております。
    芝居の話題も楽しみにしています。僕もこんなのを書きました。
    http://sadanono.exblog.jp/6136925/
    あ、僕もこんなのを書きました。