早坂暁、死去

脚本家の早坂暁が亡くなられた、88歳。

映画と言うよりは、テレビの脚本で優れた作品を残した。その意味では、テレビの脚本家の草分けの一人だろう。

彼の代表作としてNHKテレビの『夢千代日記』があり、私もそうだと思う。

ただ、浦山桐郎が監督した映画版はひどかった。実は、私はこれを日本ではなく、中国の上海市で見た。横浜市の上海との交流事業担当の課長として行ったとき、映画殿堂の開館事業の一環として、この作品を見せてくれたのである。日本語版のままの上映で、現地の人には、陰で中国人俳優の吹替えで上映された。

この映画は、異常に反原爆が強調されていて、吉永小百合は「ピカが憎い・・・」とつぶやくのである。ここは相当に問題になったようで、浦山の強い意見で無理矢理やらせたようだ。見ていてかなり白けたのを記憶している。

早坂は、日大芸術学部で、劇作家の青江舜二郎氏に師事した。

早坂の本に書いてあったが、青江は、久保田万太郎の弟子であった。そして、樋口一葉を主人公に戯曲を書き、師である久保田万太郎に見せた。そして、青江氏は、徴兵されて出征した。中国だったと思うが、その出征中に、青江は、久保田が『一葉舟』として、久保田の名で劇団新派で上演されていることを知る。

その後、青江の申し入れもあり、この劇は久保田と青江の共作となる。一時は裁判も考えたらしいが、師であり、また当時は劇壇の大ボスであった久保田万太郎に逆らうことはできず、泣く泣く承諾したとのこと。

昔の演劇界や映画界は、きれいごとではなく、実はよくあった話だと思う。

テレビ界に多大な貢献をされた脚本家の冥福をお祈りする。

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