今から十数年前、BSでアメリカの未来学者ダニエル・ベルのインタビューを放送していた。
インタビューアーは、猪口邦子の旦那の東大教授猪口孝。
当時は、邦子よりも孝の方が有名だった。
その中で、彼が言ったことで、大変興味深いことの一つに、20世紀最後に世界を覆ったのは、「民主主義革命だ」というのがあった。
1990年代初頭の当時、ロシア、スペイン、ポルトガル等々の国がみな民主主義化した。
それと同じように今、日本で起きているのは、文化の民主主義革命だと思う。
今、携帯小説で、本で、そして映画で『恋歌』が大ヒットしているのそうだ。
そして、中身はひどいらしい。
だから、従来なら、それは文学を読む目のある編集者によって却下されただろう。
だが、携帯小説は、書き手が直接読み手に文章を送ることができる。
そこには、編集者は存在せず、自由に文章が交換される。
そこで、読むものと書くものレベルが同じなので、大ベストセラーになってしまうわけだ。
それは良いことか。
勿論、良いことである。
短期的には、そうした愚劣な小説がはびこるだろう。
だが、長期的に見ればいずれそうしたものは淘汰され、本物が見直されるようになるだろう。