雨の映画


6月は、雨の季節で、われわれには憂鬱だが、農業の方にはなくてはならないものだろう。
雨の映画と言えば、黒澤明監督の『七人の侍』で、西部劇好きの黒澤明は、「アメリカにはないものとして豪雨でのアクションシーンを考えた」とのこと。
雨のシーンが嫌いだったのが、新東宝社長の大蔵貢で、シナリオに雨のシーンがあると、自らカットしたとのこと。

日活には、雨の付く映画が多く、吉永小百合と高橋英樹の『雨の中に消えて』は、大学生の二人が都議会議員選挙のアルバイトをする作品で、大田区池上で撮影された。
伊藤雄之助の樺山議員の選挙事務所に当てられたのが、私の知合いの家で、池上駅前にあった。
一週間近くいたはずで、私も見に行った。
「非常に小さいな」と思えたのが吉永小百合で、高橋英樹は、大変な二枚目だと思った。
この『雨の中に消えて』と同時に公開されたのが、浦山桐郎監督、和泉雅子主演の『非行少女』だった。
日活には、『アカシヤの雨がやむとき』もあるが、これは少々古くさい映画だった。

だが、日本映画史で、最も有名な雨の映画と言えば、『日本ニュース177号』の「学徒出陣の雨の壮行会」だろう。
これは、当時の日本映画社のカメラマンを総動員した名作で、特に腰に弁当を付けた学生の後ろ姿をパンダウンして、ドロ靴を見せるカットは、まさに泥沼の戦争に行く日本人すべての姿を表現している。

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