『四つの結婚』

1944年の東宝映画、監督が青柳信雄で、この人は『雲の上団子郎一座』等の笑えない喜劇を作っていたので、どうなのか見ると意外に面白く、テンポも良く、画面も鋭い。
青柳信雄は、新劇から東宝に入った人で、新東宝が出来るときは、裏で暗躍したらしいが、その後新東宝が駄目になると東宝に復帰する。
東宝と演劇界を結ぶ人でもあったようで、かなり会社的には評価が高かったようだ。

黒澤明とも仲がよく、息子の青柳哲郎君を、実の子のように思い可愛がっていて、アメリカにいた青柳哲郎を呼び戻して黒澤プロの重役にした。
問題の『トラ・トラ・トラ!』のときは、黒澤プロで制作をやっていたが、このときの彼の二枚舌が、最後は黒澤明の首を絞め、解任劇に至る。
白井佳生は、青柳のことを「敗戦直後、アメリカのことをやたらに振りまわした二世の外人のようだった」と言っているが、日本人には極めて評判が悪かったらしい。
だが、黒澤は、「僕が拳銃を放つと、それは地球を一周して最後僕の頭に当たる」と青柳哲郎君を擁護している。
彼が、黒澤久雄など、黒澤プロを同族で固めてしまうのは、このときのトラウマだろう。

さて、この映画、友人藤田進に頼まれて、相手のことを全く知らずに河野秋武が、結納の口上に行く落語的な件が始まり。
静岡の家に行くと、入江たか子、山田五十鈴、山根寿子、高峰秀子の四姉妹が出てくる。
結局、誰が結婚の相手か分からないまま帰京するお笑い。
そして、新郎の江川宇礼夫が北京から帰国する。相手は、三女の山根と分かる。
今度は、高峰を河野にどうか、と言う話になる。
河野は、航空研究所の飛行機の研究員。
最後は、高峰と河野が結ばれることを暗示して終わる。

なかなか面白いと思うと、なんと太宰治原作だった。
戦時中、一番安定した中篇小説を書いていた時代である。
当時、19歳の高峰秀子が可愛い。
その可愛さは、今の上戸彩よりはるかに上だろう。
日本映画専門チャンネル

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする