『リボルバー』


1988年夏、日活はアダルト・ビデオの興隆の前に、観客動員が低下しつつあったロマン・ポルノをやめ、一般映画としてシネ・ロッポニカを始め、藤田敏八、村川透、小沢啓一、実相寺照雄ら有名監督を起用する。
だが、長い間ポルノ館として定着していた日活系映画館に観客は戻らず、半年で終わる。
そのシネ・ロッポニカの1本で、脚本荒井晴彦、監督藤田敏八、主演は沢田研二、その他佐倉しおり、手塚理美、柄本明、尾美としのり、南條玲子らの豪華キャスト。
映画としては、これが藤田敏八の遺作になった。

鹿児島で平凡な警察官の沢田研二は、上司長門裕之の勧めで、警官好きの女の南條玲子と見合いする。
沢田に一目ぼれした南條だが、沢田はまったく結婚の気がない。
彼は言う、
「結婚はしたくないが、あなたとは寝たい、そういう男です」
南條と別れて公園にぼんやりとしていたとき、沢田は、中年サラリーマン小林克也に襲われ、拳銃を奪われてしまう。
小林は、部下のOLと不倫していたが、急に同僚の若い男と結婚したことに嫉妬し、襲ってやろとしたのだ。
だが、彼は怖くなって拳銃を動物園に捨て、それが高校生村上雅俊の手に渡る。

村上は、偶然公園でヤクザ風のバーテン山田辰夫が、バーの女手塚理美を強姦した現場を目撃し、それに気づき逆上した山田辰夫からボコボコにやられたことに復讐しようとし、山田がいる札幌に行く。
警察を退職した沢田研二と村上の同級生の佐倉しおり、さらに偶然競輪で大穴を当てたことから、気楽に全国行脚している柄本明と尾美としのりコンビも、柄本が手塚に、富良野のラベンダーをプレゼントしようとして札幌に来る。
大通り公園で、村上が山田に拳銃をつきつけて脅しているところに沢田が駆けつけて来て体当たりする。
村上は拳銃を落すが、落ちた拳銃をなんと南條が拾い、沢田に向かって撃つ。
と、弾は柄本の足に当る。
1ヵ月後、病院を出て、ラベンダーを持って鹿児島に戻った柄本・尾美コンビの乗ったタクシーを運転しているのは、沢田研二。

話は、沢田と南條の件、手塚や南條と普通の女たち、佐倉しおりと村上雅俊、柄本・尾美コンビの4本の話が平行して描写される。
最後は、全部一緒になるんだなと途中で分かるが、話はかなりよくできている。
ただ、鹿児島から北海道まで、ラベンダーを買うために行くなど、まさに1980年代後半のバブル時代である。
冴えない日々鬱々としている沢田研二など、まったくお呼びでなかっただろう、勿論ヒットせず。

併映の沢田主演の『夢二』は、田中陽造脚本、鈴木清順監督の大作だが、あまりにも冗漫で十分に退屈した。
隣の席の女性2人組みも「絵はきれいだが、筋はまったく分からないわね」と話していたが、まったくその通り。
銀座シネ・パトス

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