『サンダカン八番娼館・望郷』

山崎朋子原作の「からゆきさん」を描いた映画、監督は熊井啓、主演は栗原小巻、田中絹代、そしてその若いときが高橋洋子、相手役が田中健。
東宝と俳優座の共同制作なので、小沢栄太郎、岸輝子、岩崎加根子、中谷一郎、菅井きん、信欣三など新劇の役者が多く出ている。
また、熊井が日活の出なので、浜田光夫に高山千草という日活系の役者もいて、高橋洋子が最初に客を取る現地人の強面の男は、後に石原プロの刑事物で活躍する苅谷俊介だった。
サンダカンの女仲間の親分のような女性おきくがひどく立派で誰かと思ったら、なんと水の江滝子だった。
彼女の数少ない戦後の映画出演であるが、日活時代に熊井が、彼女の映画のシナリオも随分書いていたからだろう。

金宇満司のカメラ、美術の木村威夫も良く、伊福部昭の音楽は大げさでうるさいが、全体にとても丁寧に作られていることは、評価できる。
キネマ旬報ベスト1は、できすぎだが、5位入賞くらいの出来ではある。

内容的には、最後に原作者の栗原小巻が、おさきさんの田中絹代に、「自分は本当は田中絹代らの女性のことを書いて本にするためにきていたのだ、あなたを騙していた」と告白懺悔する。
と田中絹代は、「大方そんなことだろうと思っていた」と栗原を許す。
これは、日本共産党系の左翼的映画人だった熊井が、日本の底辺の大衆に理解され、最後は自分たちが愛されることを希求していることの表現のように見える。

熊井啓は、映画好きの連中に、なぜかきわめて評判の悪い監督だが、この作品は、そうひどくはない。
少なくとも最後の愚作『海は見ていた』などよりは、遥かに良いと思う。

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コメント

  1. 謎の三文字☆村石太&映画ファン より:

    映画同好会(名前検討中
    田中絹代で プログ 検索中です。
    この映画まだ 見ていませんけれど
    ラストシーンを 違う方のプログで 読んでしまいました。悲しい話ですね。戦争 嫌ですね。今 動画で サンダカン~映画予告編を見ようと思ったら 私の パソコンでは 視聴できませんでした。動画 栗原小巻 田中絹代(サンダカン八番娼館 望郷 別れの場面
    1974 を 視聴しました。昔 タオル ハンカチを プレゼントするのが 流行ったのを 思い出しました。晩年の田中絹代さんが 声をあげて泣くシーン すごいですね。
    栗原小巻さん 綺麗ですね。
    映画同好会(名前検討中

  2. さすらい日乗 より:

    そんあに悪くない作品だと思う
    熊井啓は、毛嫌いする人の多い監督だが、人間的にはとても良い人だと、『ゆきゆきて神軍』の原一男は言っています。
    この『サンダカン一番娼館・望郷』は、今日本映画専門チャンネルで放映しています。
    その他、TSUTAYAにはあると思いますが。