『アジア温泉』

新国立劇場の日韓共同製作演劇シリーズの3作目、作は鄭義信、演出は韓国のソン・ジンチェクである。

アジアの、済州島を思わせる島で温泉が出るという噂になり、そこに多くの人が集まってくる。

リゾートホテルを作ろうと、日本から勝村政信と成河の兄弟がやってくる。

彼らの父は、その島の生まれで、島を出て事業で儲けて資産を残したので、その金で土地の所有者の梅沢昌代から取得しようとやってきた。

古い因習や宗教が残る島の長のキム・ジンテは、梅沢の土地所有も認めず、開発には絶対に反対である。

だが、彼には梅沢を愛人として、息子を作った過去があり、その子は自殺してしまったのである。

成河が、キムの娘イ・ボンリョンと恋仲になったことから悲劇が始まり、二人の結婚に反対するキムは、偶然の過失から成河をナイフで刺し殺してしまう。

事実は隠されるが、最後にキムは、自分の行為を認め、勝村に謝罪して劇は終わる。

祈祷師の友近のようなおばさんのチェ・エヒョンの祈りですべてが清められて、魂が鎮められる。

もちろん、これは寓話劇であり、そううまくいくものかと思われるに違いない。

重要なのは、この相互理解の想いを両国の人が抱き続けることであり、それはワールドカップサッカー日韓共同開催を契機に進んでいると思う。

今、妄言で話題の橋下徹大阪市長にも、是非見てもらいたいと思うが、芸術、文化音痴の彼には到底理解不能だろう。

いつもながら久米大作の音楽が、時として林光のような叙情性を見せてとても良い。

新国立劇場ができて15年になるそうだが、一番の成果は久米大作の音楽ではないだろうか。

新国立劇場

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