『最後の切り札』

東中野で若松映画を観る予定だったが、時が間に合わないので、ラピュタに変える。
この映画は、以前見たと思っていたが、記憶違いで多分予告編だったのだろう。
昔は、名画座でも次週上映作品の予告編をやることがあり、事実冒頭の、宗教団体の関係者竜崎一郎を新聞記者を名乗る佐田啓二が写真を撮ろうとするところや、最後に佐田が墓を暴いて棺桶を覗くシーンなどは記憶にあるからだ。
筋はまつたく記憶してないのは当然で、まずカラー作品なのに驚く。

佐田啓二と宮口精二が、新興宗教団体に乗り込み、事務長の加藤嘉を追求している。
刑事がわざとやっているのかと思うと彼ら2人は、刑事でも新聞記者でもなく、宗教団体の新聞を出している「ダニ」だが、色々と手を使って加藤を信用させる。新聞社から佐田に電話が架かって来るが、かけているのはラーメン屋のおねえちゃんの富永ユキ。
竜崎の部下が、拳銃の手配をして警察に逮捕されていることをネタにまずは加藤を脅して、多額の賛助金を財政担当理事の殿山泰司から詐取する。
警察に捕まった男は浜村純で、刑事は松本克平、浜村の狂気の表情がすごい。

佐田は、次に落ちぶれた女優日比野恵子をテレビ局に売り込んだり、キャバレーの歌手桑野みゆきのレコーディングを手配したりしている。
要は女衒のごとき男なのだが、本当は巣鴨に洋品店を持ち、妻の小田切みきと子供がいる。
さらに、若い女の吉村真理を短期間でキャバレー間を動かして金を儲けている。
彼の手下に上野のチンピラのジェリー藤尾がいて、家で娘を中華料理屋の親父の多々良純に売りつけることもする。

筋の展開も非常に面白いのだが、ともかく配役が凄い。
団体の内部抗争で分裂した新団体の教祖が河野秋武で、側近が三井弘治だが、彼も異様な呪文を唱えて狂気を表現する。
この辺は、ベテラン役者が悪乗りを喜んで演じているという感じがする。
ジェリーが持ち込んだ闇ドル(青ドルと言っている)を佐田が売りつける相手が、三国人で親玉が石黒達也で、手下が大友純というのが泣かせる。
この大映の悪役と新東宝の怪優は、私は大変好きなのだ。
宗教団体側に立つ代議士が柳永二郎で、横に宇佐美淳也の顔も見える。
また、幹部の急死事件には毒薬が使用されたのではと示唆する医者が神山繁。
最後、柳は選挙に当選し、加藤や殿山たちは「ダニが掃除できる」と喜ぶ。
その時、佐田は最後の切り札として、死者の墓場を暴き棺桶を開ける。
だが、何もなく、これだけ用意周到にやっているの奴らはやばいと手配してあった桑野みゆきとの香港行きをしようする。
その時に、墓掘りに雇った人足の西村晃と小池朝雄の「こんな奴に金をやるのはもったいない」と佐田は思って二人を置いて逃げる。
と、西村に墓堀道具を投げられて佐田は、死んでしまう。

巣鴨の店に、宮口とジェリー藤尾が来るが、店は代が変わっていて、家族は田舎に帰ったとのこと。
宮口は言う。
「今の時代、彼のようにやらないとダメなのかもしれないな」
この新興宗教は、神道系であり、創価学会のことではないようだ。
1960年の作品だが、女優は別として、男優でご健在なのは、多分神山繁とジェリー藤尾だけにちがいない。
ラピュタ阿佐ヶ谷

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