『挽歌』

1976年、東宝で公開された原田康子原のベストセラー小説の映画化、1957年の松竹に続いて2回目だが、亀井光代主演のテレビ版もあり、これは音楽が良く、テーマ曲は今も憶えている。調べると監督は先日亡くなられた日活の野村孝だったので、音楽は多分伊部晴美だと思う。

筋は、北海道の釧路で、劇団の美術を手伝っている美少女秋吉久美子をめぐるものと言うか、この自意識過剰な少女に振り回される大人たちの悲劇。

彼女には、劇団仲間の田中健が惚れているが、秋吉は、偶然に知合った建築家の仲代達矢に強く惹かれて行く。

前作では、森雅之が演じて、美少女の久我美子は、森に適当にあしらわれつつ恋仲になると言う感じだったが、ここでは仲代は、最初から結構秋吉が好きになると言う感じで描かれている。この辺は、時代の変化である。

仲代には、もちろん妻子があり、妻は前作は高峰三枝子だったが、ここでは草笛光子である。

彼女と不倫を重ねている大学生は、前作は渡辺文雄だったが、1976年版は、村野武範である。

この二人の仲にも、秋吉は踏みこんでくるが、高峰三枝子版では、ほとんど問題にされずに追い返されたように記憶しているが。

いろいろあるが、秋吉と仲代との恋は破局に終わるが、なんと草笛が自殺してエンドマーク。

原作を読んでいないので、よく分からないが、原作の書かれた1950年代では、夫に隠れて不倫をしていた妻は制裁されて当然という意識があり、それが高峰の自殺になったと思う。

ただ、1970年代では、この夫婦は同罪ではないかと思われ、草笛の自殺はやや唐突に見える。

              

秋吉久美子は、自由奔放に生きているように的確に演じており、「1970年代は、まさに秋吉久美子時代だったなあ」と思う。

監督の河崎義祐は、『青い山脈』『陽の当たる坂道』『あいつと私』などの名作のリメークが多かったが、そう悪くない作品を残したと思う。

東宝を離れた後は、各地で出前上映会をやっていたはずだが、今はどうしているのだろうか。

日本映画専門チャンネル

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