『ブラジルの土に生きて』

南武線で立川に行き、柴崎学習館で上映された岡村淳監督の『ブラジルの土に生きて』を見る。

4時間近い長編だが、非常に面白かった。

主人公のミナスジェライスの農場に住む石井延兼さんは、1909年7月生まれで、17歳のとき、軍国主義化する日本から出てブラジルに移民し、4年後、一時来日して結婚されて、ブラジルに戻る。

彼は、実は黒澤明と同じ学年になるが、中学は成城中学で、ここは今はお坊ちゃん・お嬢さん学校だが、元は陸軍士官、幼年学校の予備校であり、当時は多分軍国教育だったはずだ。

黒澤明の兄丙午は秀才だったらしいが、府立一中(日比谷高校)受験に失敗して、陸軍軍人の父の関係で成城中学に入るが、そこの教育に反発して映画会に進むことになる。

戦後はブラジルのパラナ州で農業工場を、戦後はサンパウロ近郊で日本人農業青年団の訓練所の所長として活躍された。

映像は、退職後3女夫婦が住むミナスジェライスの農場で生きる夫妻の姿を4年間にわたって撮影したもの。

石井さんは、主に家畜の世話、妻は趣味の陶芸に励む日々、それを描く中で夫妻の生まれ、結婚、渡伯、仕事、戦後のブラジル日系社会等が描かれる。

ここでもわかるのは、特に高名ではない普通の人間の人生にもいかに大きなドラマがあるかということに大変な感銘を受ける。

クリスチャンだった夫妻(プロテスタントで内村鑑三の無教会主義とのこと)は、5人の娘を得たが、3女は熱心な信者になり、YMCAで働くと、それが1960年代の軍事政権で逮捕投獄され、行方不明になる。

その後、チリを経て、フランスに亡命し、そこでフランス人技術者と結婚する。

 その他の姉妹もアメリカ等に住んでおり、彼女たちの家族が農場に来る。

ある時、ブラジル人の農夫に花火を渡しているのでなにかと思うと、訪問者が来たときに歓迎に打ち上げるのだった。

後で、岡村さんにお聞きすると、こうした花火の使い方はブラジルではあるとのことだった。

日本では、花火は夏のものだが、海外では花火を正月や暮れに打ち上げることもあるのだ。

ブラジルは非常に面白い国で、経済や治安など問題はあるようだが、私はブラジル音楽を世界最高と思っているので、目が離せない国である。

立川市柴崎学習館

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする