『泥棒番付』 意外な傑作

題名から見て大したものではないと思っていたが、意外にも傑作だった。

幕末の京都、祇園祭の夜、池田屋事件が起き、浪花一帯で泥棒稼業をしていた勝新太郎も、取り調べに引っかかって与力の内田朝雄に過去の罪状を問われる。3年前、内田が長崎奉行所にいたとき、オランダ屋敷の倉庫を破るが、トリックのカギで指を切り落とされた泥棒だとされる。

その通り、勝の人差し指は関節から先がなかった。だが、もちろんそれはぬれぎぬであることが途中で分かる。

そして、なぜか赦免され、若者の青山良彦の面倒を見ろという。青山は、花柳流でもめている一派の頭の父親で、この時期大映の青春スターだった。

二人は、京でうどん屋を始め、ある夜、勤王派の武士を嬲り殺しにする五味竜太郎の近藤勇、五大という名の内藤武敏らに遭遇し、近藤から壬生の屯所の前に屋台を出す許可を得る。

だが、新鮮組の一員の伊達三郎は、青山に手紙を渡す。それは大阪での志士の動静のことで、実は青山も勤王の志士で、内田朝雄も幕府の役人でありながら、大塩平八郎の流れを汲む陽明学流の反幕府派であることが分かる。

そこに、内田朝雄から、小林哲子が送られてきて、青山の面倒を見ろとのこと。

内田は、密かに貨幣を改鋳して反幕府軍の軍資金を大阪の水車小屋で作っていたのだが、新鮮組にバレて襲われて殺されてしまう。

この大阪に行くか行かないかで、勝、青山、小林の3人が会話するところは、「まるで青春映画で、伊藤大輔先生は若いな」と思った。

映画『明日に向かって撃て』の3人のようにさえ見えてくる。

最後、青山は、自分の藩での勤王派の形勢が悪いと行ってしまう。

小林哲子に「好きよ」と迫られておたおたする勝新太郎がおかしい。小林は結構美人で演技力もあったが、何度かスキャンダルがあって大きくは伸びなかった。

勝は、小林に青山のところに行けと言い、壬生の屯所に忍び入り、五大の内藤武敏を殺す。

染料箱を2箱担いで勝新は逃げるが、最後、いつもの伊藤大輔の「御用提灯」の波が押し掛けたとき、

「勤皇も佐幕もあるもんか、俺なんかよりもあいつらの方が泥棒だ」と言って小判をばらまく。また、「幕府の役人のくせに反幕府の内田は何だ」と言っているが、これは大映で優れているが、反会社的な凄い作品を監督していた増村保造への池広一夫の批判ではないかと思ったが。

1966年という、日本で反体制的気分が高かった時代の雰囲気が反映していると思う。

原作司馬遼太郎、脚本伊藤大輔、監督池広一夫。

衛星劇場

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