『少年合唱隊』

一昨日、『警視庁物語』の前に上映されたのが『少年合唱隊』。昭和31年東映作品、脚本片岡薫、監督関川秀雄、主演栗村義信、音楽三木稔。1年前にウィーン少年合唱隊が来日、少年合唱は大ブームだった。私も小学6年でコーラス部に入れられ『ラ・クカラーチャ』でコンクールに出たが、予選で落選。若い音楽の先生はひどく落胆したが、私が大人が落胆したのを見た最初だったかもしれない。

題名のとおり諏訪市の小学校で少年合唱隊を作り、地域の人や施設に聞かせるというだけの話である。今見れば面白くもなんともないが、著名なバリトン歌手・栗山氏の若き姿が見られるのは珍品と言うべきだろう。時間47分、巡回映画用だったのかもしれない。

ここで追悼されているのは、主人公の少年の父親で、蒸気機関車の運転手・野々村潔。
本名岩下清、岩下志麻の父で、篠田のプロダクション・表現社の代表でもあった。母親は、この頃の母親の常連・戸田春子。駅近くの職員住宅に住んでいる。国鉄も国労も良い時代である。

田舎の「非文化的な人間」を「文化化」するためにはクラシック音楽を聞かせることが必要で、その音楽は東京、そして西欧から来るという、「西欧信仰」を誰も疑わなかった時代の遺物。
この映画でコーラスを嫌々やっていた少年たちは、今や中年じじいとなり、夜毎村のカラオケ・スナックで北島三郎や鳥羽一郎を歌っているのだろう。それこそが文化なのだ。

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