『斑女』に続いて成瀬巳喜男監督の『妻』も見る。これは、どこかで2回くらい見ているが、かなり非常に不思議な映画である。
上原謙と高峰三枝子という組み合わせが贅沢だが、日活の新規参入の以前は、5社協定もなく、比較的自由にスターも他社に出ていたのである。
それに成瀬は東宝だが、元は松竹だったということもあったのかもしれない。
この夫婦は最初から不仲で、互いに相手に文句をモノローグで言い合うところから始まる。
上原謙は、冴えないサラリーマンで、同じ会社のタイピスト丹阿弥谷津子に惚れてできてしまう。
間借りさせている画家の三国連太郎やキャバレーの女給などの挿話もあり、常に淡々としているが、夫婦の仲はさらにひどくなる。
この夫婦の高峰はどうやらお嬢様で、ろくに料理もできないことが不仲の原因のように描かれているが、成瀬が最初に結婚した東宝のスター女優・千葉早智子のことのようにも思える。
最後、丹阿弥谷津子は女性として自立する道を選び、上原は再び妻との冷えた仲を続けていくことになる。
原作では離婚するらしいが、映画の興行的配慮から離婚とはっきりさせなかったようだ。
阿佐ヶ谷ラピュタ