『君は恋人』

1966年の夏、人気絶頂のとき、ケンカのトラブルで右目を負傷した浜田光夫の1967年秋の復帰お祝い映画。
お祝いと言うことで、一種の楽屋落ち的日活映画の裏側を見せるものとなっている。
撮影所にスポーツカーで乗りつけた浜田光夫を囲んで、多くのスターが、
「浜田君、この化粧部屋に入るのは何日ぶり」と聞く、
「400日ぶり」と答える浜田。

オールスター総出演で、冒頭は監督役の石原裕次郎の「用意、スタート!」から始まる。

女優も吉永小百合、和泉雅子、清川虹子、梶芽衣子、伊藤るり子、山本陽子など。
男優もレコード会社のディレクターで小林旭、作曲家葉山良二、その他警官で高橋秀樹、ヤクザの親分宍戸錠、郷英次兄弟、深江章喜、近藤宏、岡田真澄、山内賢など。
珍しいのは戸田皓久が悪役で出ていること。彼は新劇の三期会の役者で、少々変わったルックスだった。
女優では、日活のお約束のキャバレー・シーンでは、かの殿岡ハツエが踊っている。
今の女の子に比べ著しく短足胴長で、今ではお笑いにしかならないだろう。
吉永小百合は、浜田の初恋の相手で、転校して行方不明で、今は教会でオルガンを弾いている美少女という役。
「芦川いずみと二谷英明はどこに・・・」と思うと、最後、浜田が出入りで負傷し運び込まれた病院の看護婦と医者である。
すべて適役なのはまさに職人技。

その他、舟木一夫、坂本九、ジャニーズ、克美しげる、荒木一郎、スパイダーズらの歌手も、歌の他に役をきちんと務める。
中で驚くのは、ジャニーズが『ウエスト・サイド物語』の「ジェット団」そっくりの振付で踊ること。
現在では振付にも著作権が認められているので、このような「そっくりダンス」は絶対にできない。
脚本家とマネージャー役を、渡哲也と浅丘ルリ子も演じる。
日活再開時から『幕末太陽伝』でも岡っ引きで出ている、脇で有名な河上信夫さんも、和泉と山内が働く新宿のとんかつ屋の親父役。
スターで出ていないのは、女優では松尾嘉代くらいだろう。

話は、旋盤工で浜田が貧乏からヤクザの組に入って金を儲けようとするが、改心して最後は歌手として「頑張るぞ!」と誓うもの。
これだけ多くの役者に当てはめて映画が作れるのは、監督の斉藤武市が個々の役者をよく把握していたからだろう。
これだけの盛況だったのに、4年後の1971年には日活はポルノになってしまうのだから、世の中は分からないものだ。
地震の夜には、こうした無意味な映画が最高である。
衛星劇場

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