蒲田周辺の映画館

高田馬場や新宿に続いで、多くに見に行った映画館は、地元の蒲田、川崎である。

両方には、昔は邦画5社の系列館が全部あり、洋画の封切館もあった。

蒲田には、蒲田国際というのがあり、洋画の館だったが、独立プロの作品も上映していて、宮島義勇が北朝鮮で撮ってきた人文字マスゲームの記録映画『千里馬』もここで見た。東宝の森谷司郎の傑作『兄貴の恋人』もここで見たと思う。

蒲田スカラ座という元は洋画の館もあったが、1960年代はピンク映画になっていた。

また、映画街の奥には、小さな遊園地があり、お猿の電車があったと思う。

以上は、蒲田の東口側で、駅の西口にもいろいろあった。

蒲田パレス座は、新宿のパレス座と同じ経営はずだったが、日活の二番館だった。ここは早くから昔の日活作品の再上映をやっていて、赤木圭一郎や鈴木清順作品の3本立てなどを見た。今は、東京工芸大学の敷地になっている。1970年代、パレス座は洋画系になったので、日活はパチンコ屋の地下に蒲田日活を作りロマンポルノを上映していたが、時々古い作品をやることもあり、中平康の『狂った果実』を最初に見たのもここだった。

西口のイトーヨーカ堂にも2館、テアトル蒲田と蒲田宝塚があり、蒲田宝塚は、70年代から東宝の古い映画を上映していて、エノケンの戦前の作品を何本も見たが、ここはまだ映画館をやっている。

蒲田から蓮沼に行く途中の道に帝都座と言うのがあり、新東宝系で、1960年代中頃は閉鎖していた。だが、なぜか70年頃に再開し、ここでは成沢昌成監督、佐久間良子主演の東映のポルノ的映画『雪夫人絵図』を見たが、その後再び閉鎖したようだ。

蓮沼にも2館あり、南星座とヒカリ座で、南星座は洋画ですぐに閉鎖されたが、ヒカリ座は長くあった。山田洋次監督の『男はつらいよ』の1作目を見たのもここだった。

前日の佐藤栄作首相訪米阻止闘争の自己防衛に出た「蒲田自警団」の若者が、オールナイト上映で夜を過ごして座席で寝ていた。増村保造の『盲獣』や、森一生の『ある殺し屋』を見たのはここで、ガラガラの中で一人感激していた。ここではピンク映画と実演を混ぜてやったことがあり、特別料金だったが、超満員だった。

地元の池上には池上映画劇場があり、東宝と東映系で、三船敏郎と鶴田浩二の『宮本武蔵』はここで見て、東野英次郎のなんとか一族の異様な悪役顔と、中村扇雀が女忍者に化けるために歯を抜かれる手術をされるシーンが異常に怖かったのを憶えている。

東宝では、水野久美、上原美佐、三井美奈の東宝スリー・ビユーティーズの宣伝短編もここで見た。冒頭はスタンダード版で上映され、いきなりシネスコ版に拡張され3人が並ぶカットは衝撃的だった。

その後、池上にも東映の上映館ができたので、東映系は池上劇場ではなくなり、大映が上映されるようになった。市川崑監督の『おとうと』はここで見て、最後の「エンドタイトル」が、画面の右半分の階段のところに出るのを「随分と洒落た映画だな」と思ったものだ。

この池上劇場も、蓮沼のヒカリ座も現在は、みなマンションになっている。

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