村上春樹の短編をイッセー尾形の主演で、市川準が監督した作品である。
一口に言えば、村上の気障に尾形の嫌味を掛け、さらに市川の不愉快さを掛けたような気分の悪い作品だが、それをすべて帳消にしているのが、宮沢りえの美しさとスタイルの良さである。
トニー滝谷は、日本人だが、ジャズメンだった父親の関係で、トニー滝谷(きやではなく、たきたにだそうだ)、トニーと呼ばれ、グラフィック・デザインの仕事をしている。
映画は、三つの部分に分かれているが、前半の滝谷の仕事や生い立ちを紹介するところでは、画面は人物の膝から上のみを撮り、足許は一切見せない。何でこんなに不愉快な撮り方をするのか理解できない。
宮沢りえが出てきて、買い物中毒の彼女が莫大な金額の買い物をするシーンでは、宮沢の足のみを写す。
そして、予期したように宮沢が事故死した後は、また元のサイズに戻る。
一体この映画で、市川は何を言いたいのだろうか。
こんなことを言うのは野暮なことで、スタイルのみを見せたかったのだ、と言うのかもしれないが、それなら一般公開せず、家で一人で見ていればよいのだ。
村上春樹の小説は、なかなか映像化しにくいが、それは彼の小説自体がもともと映像的だからである。
それは、五木寛之の小説も映画化して成功した作品があまりないのとよく似ている。
五木の小説の映画化で成功したのは、『青春の門』のようなメロドラマだけである。
他の小説は中身の希薄さが透けて見えるものになっていると私は思う。
日本映画専門チャンネル
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